Posted by naruse on 30 May 2019
Ruby 2.7シリーズの最初のプレビュー版である、Ruby 2.7.0-preview1をリリースします。
プレビュー版は、年末の正式リリースに向け、新たな機能を試し、フィードバックを集めるために提供されています。 Ruby 2.7.0-preview1では、多くの新しい機能やパフォーマンスの改善が含まれています。 その一部を以下に紹介します。
Compaction GC
断片化したメモリをデフラグするCompaction GCが導入されました。
一部のマルチスレッドなRubyプログラムを長期間動かし、マーク&スイープ型GCを何度も実行していると、メモリが断片化してメモリ使用量の増大や性能の劣化を招くことが知られています。
Ruby 2.7ではGC.compact
というメソッドを導入し、ヒープをコンパクションすることが出来るようになります。ヒープ内の生存しているオブジェクトを他のページに移動し、不要なページを解放できるようになるとともに、ヒープをCoW (Copy on Write) フレンドリーにすることが出来ます。 #15626
Pattern Matching [Experimental]
関数型言語で広く使われているパターンマッチという機能が実験的に導入されました。 渡されたオブジェクトの構造がパターンと一致するかどうかを調べ、一致した場合にその値を変数に代入するといったことができるようになります。 #14912
case JSON.parse('{...}', symbolize_names: true)
in {name: "Alice", children: [{name: "Bob", age: age}]}
p age
...
end
詳細については Pattern matching - New feature in Ruby 2.7 を参照してください。
REPL improvement
Ruby に添付されている REPL (Read-Eval-Print-Loop) である irb
で、複数行編集がサポートされました。これは reline
という readline
互換のピュア Ruby 実装によるものです。
また、rdoc 連携も提供されるようになっています。irb
内で、クラス、モジュール、メソッドのリファレンスをその場で確認できるようになりました。 #14683, #14787, #14918
これに加え、binding.irb
で表示される周辺のコードや、コアクラスのオブジェクトのinspect結果に色がつくようになっています。
主要な新機能
-
デフォルトのブロックの仮引数として番号指定パラメータが試験的に導入されました。#4475
-
開始値省略範囲式が試験的に導入されました。これは終了値省略範囲式ほど有用ではないと思われますが、しかし DSL のような目的には役立つかもしれません。 #14799
ary[..3] # identical to ary[0..3] rel.where(sales: ..100)
-
Enumerable#tally
が追加されました。各要素の出現回数を数えます。["a", "b", "c", "b"].tally #=> {"a"=>1, "b"=>2, "c"=>1}
パフォーマンスの改善
-
JIT [Experimental]
-
最適化の際の仮定が無効とされた場合、JIT 化されていたコードがより最適化度が低いコードに再コンパイルされるようになりました。
-
あるメソッドが「純粋」であると判定された場合、メソッドのインライン化が行われるようになりました。この最適化はまだ実験的であり、また多数のメソッドが今はまだ「純粋」と判定されないままです。
-
--jit-min-calls
オプションのデフォルト値が 5 から 10,000 に変更されました。 -
--jit-max-cache
オプションのデフォルト値が 1,000 から 100 に変更されました。
-
その他の注目すべき 2.6 からの変更点
-
ブロックを渡すメソッド呼び出し中の、ブロックを伴わない
Proc.new
とproc
が警告されるようになりました。 -
ブロックを渡すメソッド呼び出し中の、ブロックを伴わない
lambda
はエラーとなるようになりました。 -
Unicode および Emoji のバージョンが 11.0.0 から 12.0.0 になりました。[Feature #15321]
-
Unicode のバージョンが 12.1.0 となり、新元号「令和」を表す合字 U+32FF がサポートされました。[Feature #15195]
-
Date.jisx0301
,Date#jisx0301
, およびDate.parse
で非公式に新元号に仮対応しました。これは JIS X 0301 の新しい版で正式な仕様が決定されるまでの暫定的なものです。[Feature #15742] -
Ruby のビルドに C99 に対応したコンパイラが必要になりました。[Misc #15347]
なお、こうした変更により、Ruby 2.6.0 以降では 1727 個のファイルに変更が加えられ、76022 行の追加と 60286 行の削除が行われました !
Ruby 2.7 でプログラミングをお楽しみください!
ダウンロード
-
https://cache.ruby-lang.org/pub/ruby/2.7/ruby-2.7.0-preview1.tar.gz
SIZE: 16021286 bytes SHA1: 2fbecf42b03a9d4391b81de42caec7fa497747cf SHA256: c44500af4a4a0c78a0b4d891272523f28e21176cf9bc1cc108977c5f270eaec2 SHA512: f731bc9002edd3a61a4955e4cc46a75b5ab687a19c7964f02d3b5b07423d2360d25d7be5df340e884ca9945e3954e68e5eb11b209b65b3a687c71a1abc24b91f
-
https://cache.ruby-lang.org/pub/ruby/2.7/ruby-2.7.0-preview1.zip
SIZE: 20283343 bytes SHA1: 7488346fa8e58203a38158752d03c8be6b1da65b SHA256: fdf25573e72e1769b51b8d541d0e1a894a5394dbfdf1b08215aa093079cca64c SHA512: b3b1f59dce94c242ef88a4e68381a4c3a6f90ba0af699083e5a1a00b0fb1dce580f057dad25571fe789ac9aa95aa6e9c071ebb330328dc822217ac9ea9fbeb3f
-
https://cache.ruby-lang.org/pub/ruby/2.7/ruby-2.7.0-preview1.tar.bz2
SIZE: 14038296 bytes SHA1: f7e70cbc2604c53a9e818a2fc59cd0e2d6c859fa SHA256: d45b4a1712ec5c03a35e85e33bcb57c7426b856d35e4f04f7975ae3944d09952 SHA512: a36b241fc1eccba121bb7c2cc5675b11609e0153e25a3a8961b67270c05414b1aa669ce5d4a5ebe4c6b2328ea2b8f8635fbba046b70de103320b3fdcb3d51248
-
https://cache.ruby-lang.org/pub/ruby/2.7/ruby-2.7.0-preview1.tar.xz
SIZE: 11442988 bytes SHA1: 45e467debc194847a9e3afefb20b11e6dc28ea31 SHA256: 8c546df3345398b3edc9d0ab097846f033783d33762889fd0f3dc8bb465c3354 SHA512: d416e90bfa3e49cc0675c4c13243c8ec319b7a0836add1bd16bd7662d09eaf46656d26e772ef3b097e10779896e643edd8a6e4f885147e3235257736adfdf3b5
Ruby とは
Rubyはまつもとゆきひろ (Matz) によって1993年に開発が始められ、今もオープンソースソフトウェアとして開発が続けられています。Rubyは様々なプラットフォームで動き、世界中で、特にWebアプリケーション開発のために使われています。